必要以上に原状回復費用を支払っていませんか?
賃貸物件には必ずつきものの敷金と原状回復。大家さんに言われるがままの金額を支払っていませんか?物件の退去時に「敷金がほとんど返ってこなかった」「追加で請求された」といって泣きを見ている方が多くいらっしゃいます。
差し引かれるのは当たり前、支払うのが当然だと思われているこの敷金、原状回復費用。ですが、中には「負担の義務のないものや金額まで請求されている」ケースが多数あります。また原状回復をめぐって、大家さんと争う入居者も多くいらっしゃいます。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に学ぶ
- 左 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
- 右 賃貸住宅トラブル防止ガイドライン
トラブルの原因にもなっているこの「原状回復費用」。実は、トラブルを回避し、入居者の負担範囲を明確にするための「ガイドライン」が設けられています。
そのガイドラインとは、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものです。負担の範囲や原状回復の考え方などが記載されています。
国の定めたガイドラインであるため、公平性、信頼性が十分に確保されています。このガイドラインをもとに、お部屋の確認をすれば、負担が必要か必要でないかを把握することができます。
この原状回復についてのガイドラインは、国土交通省が定めたもののほかに、「東京都が定める賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」というものもあります。内容は国土交通省のものとあまり変わりませんが、東京都にお住まいの方は合わせて確認することをおすすめします。
ガイドラインを完全網羅!入居者が負担しなくていいもの一覧
「ガイドラインを熟読すれば、退去も原状回復も怖くありません!」
ですが、このガイドラインは173ページもあり、全てを読むには少々時間がかかります。また文字ばかりで面白みもなく、途中で飽きてしまうような内容です。
そこで!原状回復と費用負担に関係する項目を抜き出し、一覧にしました!ガイドラインの入居者の負担範囲を完全網羅しましたので、この一覧さえ確認すればガイドラインを読む必要もありません。
破損していない畳の裏返し、表替え
入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
破損のない畳の裏返し・表替えは、大家さんが衛生面や見栄えなどを気にして行われるものです。次の入居者が、より快適にお部屋を利用できるようにするためという大家さんの都合なので、入居者に負担する義務は発生しません。
日照・雨漏りによる畳、フローリングの色落ち、変色
日照は通常の生活で避けられないものであり、また、構造上の欠陥は、賃借人には責任はないと考えられる(賃借人が通知義務を怠った場合を除く)。(ガイドラインより)
専門家による解説
日焼けや雨漏りは入居者の落ち度ではないとされます。入居者の責任ではない部分の費用を請求することは認められないため、この場合負担する義務は発生しません。ただし、お部屋に雨漏りなどの欠陥があった場合は、大家さんに報告が必要です。
フローリングのワックスがけ
ワックスがけは通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、物件の維持管理の意味合いが強いことから、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
フローリングのワックスがけは、見栄えを気にするもので日常生活での必要性は低いとされます。このためフローリングのワックスがけは大家さんの都合になるので、負担する義務は発生しません。
カーペット、床のへこみ、位置跡
家具保有数が多いという我が国の実状に鑑みその設置は必然的なものであり、設置したことだけによるへこみ、跡は通常の使用による損耗ととらえるのが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
家具を置いたことによるカーペットや床のへこみは、日常生活において避けられないと考えられます。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
テレビ、冷蔵庫など電化製品の背面の黒ずみ
テレビ、冷蔵庫は通常一般的な生活をしていくうえで必需品であり、その使用による電気ヤケは通常の使用ととらえるのが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
生活必需品である電化製品の電気ヤケは避けられず、通常の使用範囲内の損傷とされています。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
エアコンを設置する際のビス穴
エアコンについても、テレビ等と同様一般的な生活をしていくうえで必需品になってきており、その設置によって生じたビス穴等は通常の損耗と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
生活必需品であるエアコンの設置のためのビス穴は、通常の使用範囲内の損傷とされています。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
壁、クロスの日焼け、変色
畳等の変色と同様、日照は通常の生活で避けられないものであると考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
日光による日焼けや変色は、日常生活では避けられず、通常使用の範囲内の損傷とされています。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
壁、クロスの画鋲、ピンによる穴
ポスターやカレンダー等の掲示は、通常の生活において行われる範疇のものであり、そのために使用した画鋲、ピン等の穴は、通常の損耗と考えられる(ガイドラインより)
専門家による解説
ポスターやカレンダーを張ることは日常生活の範囲内の使用され、このために使用する画鋲やピンによる損傷もています。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
壁、クロスのポスター、カレンダーの跡
壁にポスター等を貼ることによって生じるクロス等の変色は、主に日照などの自然現象によるもので、通常の生活による損耗の範囲であると考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
日焼けや変色は、日常生活では避けられず、通常使用の範囲内の損傷とされています。このため入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。
地震で破損したガラス
自然災害による損傷であり、賃借人には責任はないと考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
地震などの自然災害によるガラスの損傷は、入居者の落ち度とは認められないとされます。このため負担する義務は発生しません。
網入りガラスの亀裂(自然に発生したもの)
ガラスの加工処理の問題で亀裂が自然に発生した場合は、賃借人には責任はないと考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
網入りガラスに生じる亀裂は、熱割れといわれるものです。この熱割れは、ガラスをはめ込む際の加工に問題があった場合や、経年によって自然に生じる亀裂です。このため、網入りガラスの亀裂は入居者の落ち度とは認められないので、負担する義務は発生しません。ただし、物をぶつけたなどの衝撃による損傷は、入居者の負担になります。
網戸の張替え(破損していないもの)
入居者入れ替わりによる物件の維持管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
破損のない網戸の張替えは、大家さんが衛生面や見栄えなどを気にして行われるものです。次の入居者が、より快適にお部屋を利用できるようにするためという大家さんの都合なので、入居者に負担する義務は発生しません。
浴槽、風呂釜等の取替え(破損していないもの)
物件の維持管理上の問題であり、賃貸人負担とするのが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
畳や網戸と同様、浴槽・風呂釜等の取替えは、大家さんが衛生面や見栄えなどを気にして行われるものです。次の入居者が、より快適にお部屋を利用できるようにするためという大家さんの都合なので、入居者に負担する義務は発生しません。
経年劣化によるエアコン、給湯器などの設備の故障
経年劣化による自然損耗であり、賃借人に責任はないと考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
経年劣化によるエアコンや給湯器などの設備の故障は、入居者の責任ではないとされます。このため入居者に負担する義務は発生しません。
台所、トイレなどの消毒
消毒は日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
台所やトイレなどの水まわりの設備の消毒は、一般的な掃除と異なることから、入居者にその負担の責任はないとされます。このため費用の負担をする義務は発生しません。 ただし、台所のやトイレなどの掃除は入居者の責任となります。掃除を怠ったことによる水垢やカビなどの清掃費用は請求される可能性が高いので、日ごろの掃除を忘れないようにしましょう。
エアコンの内部洗浄
喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
エアコンの内部洗浄は、日常生活において必要性が低いとされています。このため内部洗浄は大家さんの都合いなるので、負担する義務は発生しません。ただし、タバコのヤニなどで通常以上に汚れていた場合は、洗浄代金を請求される可能性があります。
鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
壊れていない、亡くしていない鍵の交換は、防犯面など次の入居者のことを考えて行われます。これは物件の管理上の問題で大家さんの都合になるため、負担する義務は発生しません。
専門業者による入居、退去時のハウスクリーニング
賃借人が通常の清掃(具体的には、ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り、換気扇、レンジ回りの油汚れの除去等)を実施している場合は次の入居者確保のためのものであり、賃貸人負担とする ことが妥当と考えられる。(ガイドラインより)
専門家による解説
お部屋全体のハウスクリーニングは、清潔な部屋にすることで次の入居者が入りやすくするために行われます。これは入居者を確保したいという大家さんの都合になるため、負担する義務は発生しません。
原状回復のポイント大家さん都合による原状回復の費用は、負担の義務はない
原状回復の負担する、しないの違いは、「大家さんの都合」か「入居者の落ち度」かで変わります。大家さんの都合による現状回復の場合は、その費用の負担は大家さんが持たなければいけません。また日照や自然災害などの入居者に落ち度や責任のない部分の費用も、大家さんが負担しなければいけません。
このため、大家さんの都合や入居者落ち度がなかった部分の費用の請求があった場合、支払を拒否することができるとされています。
入居者が負担しなければいけないもの一覧
負担しなくていいものの次は、負担しなければいけないものについて把握しておきましょう。
入居者が負担するもの | ||
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床 | 畳 |
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フロ ー リング |
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カ ー ペット ・他 |
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壁 ( クロス) ・天井 |
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柱 |
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設備 |
水まわり |
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鍵 |
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